歯の裏側(舌側)からの矯正とは
矯正装置を歯の裏側に装着する治療法です。
「矯正治療中の見た目が気にならない」ことが最大の特徴で、当院では大人を中心に多くの方がこの治療法を選択しています。
ほぼ全ての歯並びに適応で、マウスピース型矯正装置より精度の高い治療効果が期待できます。
また、当院の歯の裏側(舌側)からの矯正は、従来の表側矯正と遜色ない治療効果(期間や仕上がり)を提供できます。
「2000年夏より歯の裏側(舌側)からの矯正をスタートし、今年で19年になります。“人目を気にせず歯並びをキレイにしたい”という多くの患者様の声に応えられるこの治療技術を提供できることは、25年間の臨床経験の中で最も大きな喜びです。」 院長/小玉晃平
歯の裏側(舌側)からの矯正のメリットとデメリット
メリット
見た目を気にせず治療ができる
矯正装置が歯の裏側に付いているため、他の人からはほとんど見えません。この審美性に優れていることが最大のメリットです。
そのため審美的制約の多い職業の方でも「仕事と矯正治療の両立」が可能です。
また入学式、卒業式、成人式、結婚式など「人生の様々な記念日」も、矯正装置を気にせず最高の笑顔で迎えられます。
虫歯になりにくい
歯の表面のエナメル質は表側より裏側のほうが3倍程厚く、虫歯に対する耐性が強いと言われています。また歯の裏側は常に自浄作用のある唾液で潤っているため、表側に比べて虫歯になりにくいと言われています。
歯の表側のエナメル質が健全に保たれる
矯正治療が終わり装置を外した後のエナメル質は多少傷が付きます。歯の裏側(舌側)からの矯正なら、目立ちやすい歯の表側のエナメル質に対するダメージがほとんどありません。
安全性
表側矯正では歯の表側に装置が付いているため、口元に外力(ぶつける、押し付けられるなど)が加わった際に唇をケガしてしまうことがしばしばあります。
スポーツ選手や一部の楽器を演奏する際などは要注意です。その点歯の裏側(舌側)からの矯正は外力が加わった際にケガをするリスクが少ないと言えます。
舌癖の改善
歯に接触する舌、頬、口唇などの筋肉には歯を動かす力があります。特に舌で歯を押してしまう癖(舌癖)は治療効果に悪影響を与えます。歯の裏側(舌側)からの矯正では、装置が舌に触れないように指導することで舌癖の改善がしやすいと言われています。
デメリット
違和感と発音障害
歯の裏側(舌側)からの矯正では矯正装置が舌に触れやすいという特性上、「発音障害」(サ行・タ行・ラ行の話しにくさ)「違和感」などが指摘されます。
これらは個人差がありますが、数週間で慣れる傾向にあります。
またブラケットの小型化が進み、以前より快適な治療が可能になりました。
歯磨きのしにくさ
装置が自分でも見えにくいため、歯磨きはやや難しくなります。
表側矯正に比べて虫歯にはなりにくいものの、磨き残しは歯肉炎や歯周病の原因となり治療効果に影響するため、日々のブラッシング管理が大切になります。
費用が高い
装置はすべてカスタムメーイドです。またより専門的な知識と精密な技術が求められるため、表側矯正よりは治療費が高くなる傾向にあります。
ハーフリンガル(コンビネーション)とは
上顎を裏側、下顎を表側から治療する方法です。(逆の場合もあります)
ハーフリンガルを考えている方は次のような理由によります。
1. 治療費を抑えたい
2. 発音しにくさが心配
3. 治療期間・仕上がりが心配
1「見た目は気になるけど、治療費を少し抑えたい」場合にはハーフリンガルが選択肢にあがります。ただし表側の装置が目立つのは前提となります。
2の「発音しにくさ」ですが、以前は“下顎の裏側に矯正装置がつくと話しにくくなる”ということがありましたが、装置の小型化が進み発音への影響も大分改善しています。
3カウンセリングでよく聞くのが「他のクリニックでは“下顎は裏側からはできないか、すごく時間がかかる”と説明された」という話です。
“下顎の裏側治療はより術者の技術を要する”ことによりますが、当院を含め裏側からの治療の経験値が高いクリニックでは、基本的に「治療期間や仕上がり」は変わりません。
ハーフリンガル(コンビネーション)矯正の症例紹介
ハーフリンガル Case 01
患者 26歳6ヶ月 女性(会社員)
主訴 でこぼこ。口元の突出。
〉 診断
前歯部叢生、上下顎前突
〉 治療計画
抜歯:上下顎左右4
装置:上顎/リンガルブラケット矯正装置(ALIAS)、下顎/ラビアルブラケット矯正装置(T21)、歯科矯正用アンカースクリュー
〉 治療概要
叢生と口元の突出改善のため抜歯治療を選択。前歯部後方移動に歯科矯正用アンカースクリューを使用した。
治療期間:24ヶ月
治療費:114万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、リセッション、ブラックトライアングルなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
ハーフリンガル Case 02
患者 21歳11ヶ月 女性(大学生)
主訴 でこぼこ。
〉 診断
前歯部叢生
〉 治療計画
抜歯:上下顎左右4
装置:上顎/リンガルブラケット矯正装置(ClippyL)、下顎/ラビアルブラケット矯正装置(Clear)、歯科矯正用アンカースクリュー
〉 治療概要
叢生改善のため抜歯治療を選択。前歯部後方移動に歯科矯正用アンカースクリューを使用した。
治療期間:224ヶ月
治療費:112万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、リセッション、ブラックトライアングルなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
歯の裏側(舌側)からの矯正の症例紹介
Case 01
患者 27歳 女性(会社員)
主訴 でこぼこの見た目が気になる。重なっている部分が磨きにくい。
〉 診断
重度の前歯部叢生
右側小臼歯部シザースバイト
開口時の顎関節症症状(クリック音)
〉 治療計画
抜歯:上顎左右4、下顎左側4、下顎右側5*
*右下は修復歯である5を抜歯した
装置:リンガルブラケット矯正装置(Clippy L)/歯科矯正用アンカースクリュー
〉 治療概要
叢生が強いため抜歯治療を選択。前歯部後方移動に歯科矯正用アンカースクリューを使用した。咀嚼運動時の干渉がなくなり顎関節症症状も改善した。
治療期間:30ヶ月
治療費:130万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、リセッション、ブラックトライアングルなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
Case 02
患者 24歳 女性 (店舗勤務)
主訴 受け口と八重歯の見た目が気になる
〉 診断
骨格性反対咬合(機能的前方位*を伴う)
*上下の前歯切端が早期接触し、下顎が前方ずれた位置で咬むこと
上顎前歯部の叢生
低位舌とスラスト
〉 治療計画
抜歯:下顎親知らずの抜歯
装置:リンガルブラケット矯正装置(Clippy L)
〉 治療概要
低位舌とスラストの改善のためMFTを行った。骨格性反対咬合では外科手術も考えられるが、患者希望により矯正治療のみで機能的咬合を確立した。
治療期間:19ヶ月
治療費:120万円+tax
〉 治療上のリスク等
リセッション、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
Case 03
患者 21歳 男性(カメラマン)
主訴 でこぼこと口元の突出が気になる
〉 診断
重度の前歯部叢生
叢生部分に歯肉炎を認める
〉 治療計画
抜歯:上顎左右4、下顎左右8+IPR
装置:上顎 リンガルブラケット矯正装置(Clippy L)下顎 ラビアルブラケット矯正装置(Clear Bracket)
〉 治療概要
上顎は叢生とオーバージェット改善のため抜歯治療を選択。前歯部後方移動に歯科矯正用アンカースクリューを使用した。
下顎は左右8の抜歯による臼歯部uprightとIPRにより非抜歯で排列した。
叢生の改善により清掃性が向上し、前歯部の歯肉炎も改善した。
治療期間:24ヶ月
治療費:112万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、リセッション、ブラックトライアングルなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
装置について
基本構造
ブラケット
歯にワイヤーを固定する土台となる装置。様々な種類があります。
歯科用接着剤で歯面に装着します。
ベースレジン
歯面とブラケットの間を緊密に埋める樹脂材料で、歯科用接着剤で歯面と接着します。短時間で接着可能な光重合タイプ(LED照射で数秒で硬化する)を使用しています。
TEC(Temporary Crown)
抜歯部位の隙間を目立たないようにするための仮歯。発音時の息漏れを軽減する効果もあります。隙間の隣の歯に接着剤で固定します。
アーチワイヤー
“歯に矯正力を加える動力源”となる「柔らかい形状記憶合金」や、“歯が動く際にレール”の役割をする「硬いステンレススチール」などを治療段階に合わせて選択します。
1. リンガルブラケット矯正装置(左/ALIAS、右/Clippy L)
2. リンガルブラケット矯正装置(Kurz7th)
特徴
リンガルブラケット矯正装置(ALIAS/Clippy L)より大きいものの、Bite planeというテーブル状の構造を利用することでDeep bite(咬み合わせの深い状態)の治療には非常に有効です。
Bite plane(左写真↑)に下顎の前歯を当てることにより、安定した咬合挙上が可能になります。
*当院では症状に合わせて、適切なブラケットを選択しています。
歯の裏側(舌側)からの矯正に関するよくあるご質問
Q 歯の裏側(舌側)からの矯正の治療期間はどのくらいですか?
治療期間は症状により異なります。軽度な非抜歯治療では1年程度、難易度の高い抜歯治療では2年半程度要する場合もあります。(表側矯正と同程度です)
年単位の治療期間が気になるところですが、多くの場合「最も気になる前歯の見た目」は半年程度で整います。
この時期は歯並びがダイナミックに変化するため、矯正治療に対するモチベーションが高くなる傾向があります。
また、歯の裏側(舌側)からの矯正では装置が目立たないため、結婚式や就職活動の「半年前からのスタート」でも価値があるのではないでしょうか。
歯の裏側(舌側)からの矯正を希望される方の多くが、次のような項目について気にされています。
詳しくは関連記事をご覧ください。正しく理解することで「不安」を「安心」に変えましょう。
EXPLANATION
❶ 治療中の痛みと対処法→ 関連記事「矯正治療の3つの痛みと対処法」
❷ 装置の違和感と発音への影響→ 関連記事「発音・滑舌(4)」
❸ 口元・横顔のラインの変化→ 関連記事「イー・ライン(Eライン)」
❹ 抜歯をした隙間は目立つのか→ 関連記事「発歯を抜いた隙間はどうするの?」