2020年6月30日 編集
1. イー・ライン(Eライン)とは?
1-1. イー・ライン(Eライン)の定義
イー・ライン(Eライン)とはエステティック・ライン(Esthetic line)の略称です。
「美しく調和のとれた横顔の基準」として、1954 年にアメリカの矯正歯科医Dr.ロバート・リケッツ(Robert Murray Ricketts)により定義された概念です。
具体的には、顔を横から見た場合(側貌)の鼻の先(鼻尖)と顎の先(オトガイ)を結んだ線のことを言います。
矯正治療を考えている方の中で「歯並び・咬み合わせ」だけでなく「口元や横顔のライン」をバランスよく整えたいと考えている方は多くいます。
日本成人矯正歯科学会(JAAO)では、1990年から「E-ライン・ビューティフル大賞」を設けて「矯正歯科治療の効果を一般の方々に理解していただくための対外的アピール」を行っています。
皆さんも様々なメディアを通じてご覧になったことがあるのではないでしょうか?
1-2. 理想的なイー・ライン(Eライン)とは?
「美しく調和のとれた横顔・口元のバランス」の基準は人種(骨格の差異)により異なります。Dr.リケッツは
「上下の口唇がイー・ライン(Eライン)に触れずに、少し後ろに位置する」
状態が理想的であると提唱しています。
これは欧米系の人種、すなわちコーカソイド(Caucasoid)の場合の基準です。
1-3. 日本人とイー・ライン(Eライン)
日本人の場合、形態人類学上はモンゴロイド(Mongoloid)に分類されます。
一般的に、欧米人と比較して鼻が低く、オトガイの突出も強くないため「好ましい側貌・口元のバランス」の基準がDr.リケッツの定義と少し異なります。
日本人の場合
「イー・ライン(Eライン)と上下の口唇の先端が接しているか、やや内側にある」
状態が好ましいとされています。
2. 口元に影響を与える要素
2-1.「美しく調和のとれた横顔・口元のバランス」に影響を与える要素
「美しく調和のとれた横顔・口元のバランス」=
「イー・ライン(Eライン)」と「上下の口唇」の位置関係
であることを見てきました。
このうち矯正治療で、コントロールできるのが「上下の口唇の位置」です。
理由は、「上下の口唇の位置」は「前歯の位置」と関係があるからです。
2-2. 口唇の位置に影響を与えるもの
「上下の口唇の前後的な位置」に影響を与える要素の1つは、「上下の前歯の前後的な位置」です。
そのため「上下の前歯の前後的な位置」に悪影響を与えるような歯列不正がある場合には、「美しく調和のとれた横顔」に影響を与える場合があります。
上顎前突(出っ歯)図4-1.2、下顎前突(受け口)図5-1.2、上下顎前突 図6-1.2などの歯列不正が該当します。
図4-2 上顎前突(出っ歯)
図5-2 下顎前突(受け口)
図6-2 上下顎前突
3. 矯正治療でのイー・ライン(Eライン)への配慮
「美しく調和のとれた横顔・口元のバランス」を実現するため、当院では次のような配慮のもとで治療を行っています。(イメージしやすいように簡略化しています)
3-1. イー・ライン(Eライン)に対して口唇が出すぎている場合
→ 前歯の位置を後退させます。多くの場合で抜歯が適応になります。
3-2. イー・ライン(Eライン)に対して口唇が引っ込みすぎている場合
→ 前歯の位置や角度を調節して口唇に張りを持たせます。
このように矯正治療で「前歯の位置を変えることによって口唇の位置に変化を与える」ことができます。
*実際には骨格の位置、筋肉の緊張度など、いろいろな要素を考える必要があります。
また当院で専門に行っている舌側矯正では、基本的に歯の表側に装置(ブラケット)がついていません。
そのためブラケットの厚みが口唇の位置に影響を与えることがなく、毎回の治療中に正確にイー・ライン(Eライン)と口唇の関係を確認することができます。
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4. イー・ライン(Eライン)と歯を抜かない矯正治療について
4-1. イー・ライン(Eライン)と歯列のデコボコ
次のような場合は、どのような治療プランを考えたら良いでしょう?
「イー・ライン(Eライン)に対して、理想的な口元のバランスをしているが、歯列にはデコボコが強くみられる。」
このような場合は、口元のバランスを極端に崩すことなく、デコボコを改善する必要があります。
そもそも、デコボコは歯が並ぶ隙間がないことで生じていることがほとんどです。
少し専門的には「歯と歯槽基底(歯が並べる骨)の大きさの不調和が生じている」となります。
そのため、デコボコを並べるのに必要な隙間の量を計算して「それを作り出す」ことになります。
そこで一番多い解決方法が「抜歯」です。前から4番目の第一小臼歯を抜歯してデコボコを並べるのです。
4-2.抜歯をするのには理由があります。
ここでしっかり理解していただきたいことは
「歯列矯正で抜歯をする場合は、必ず理由がある」
ということです。
「抜歯をしないと治療目標が達成できない、もしくは抜歯をしたほうがより多くのメリットを得られる」
このような場合に矯正医は抜歯を選択するのです。
インターネットでは「歯を抜かない矯正」を「極端に宣伝」しているクリニックもあります。患者様の誤解を招くような表現も見受けられます。
*当然歯を抜かない矯正をしっかりマスターし実践しているドクターも多数います。
歯列矯正に関して十分に理解している歯科医師であれば誰しも「可能な限り歯は抜きたくない」と考えていますし、そのようなトライもします。
しかし「歯を抜かないこと」が治療目標ではないですよね?
歯列不正を改善し健康に咬めること。
それが長期にわたって安定していること。
口元のバランスがとれていること。
などを達成するのが治療目標です。
歯を抜かないことにこだわりすぎたために、口元が極端に突出したり、顎関節症を訴える方も多くいらっしゃいます。
歯列矯正は、矯正歯科クリニックでの受診をお勧めします。
(文・監修/医療法人社団Synchronize SYNC横浜元町矯正歯科 小玉晃平)
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