出っ歯(上顎前突 じょうがくぜんとつ)
上の前歯が下の前歯より過剰に前方に突出している症状で、上顎前突とも呼びます。
平成23年の厚生労働省の歯科疾患医療調査では12~20歳の13%が上顎前突と報告されています。
上顎前突のタイプ
①上の前歯が強く前方に傾斜している(歯槽性)
②上顎が過度に前方に出ている(骨格性)
③下の前歯が内側に傾斜している(歯槽性)
④下顎が過度に後方に引っ込んでいる(骨格性)
原因
①遺伝
②指しゃぶりや舌の突出などの悪習癖
③口呼吸(アデノイド、扁桃肥大、鼻炎などを伴う)
上顎前突のリスク
①前歯が外傷を受ける可能性が非常に高い
②前歯でものが咬みにくい(胃腸障害や嚥下障害を起こしやすい)
③口が閉じにくく発音がしにくい
④ドライマウスになりやく唾液の分泌量が減少する傾向がある
その結果以下のようなリスクが高まる
1. 虫歯になりやすい
2. 歯肉炎になりやすい
3. 口臭の原因になりやすい
⑤審美的障害(見た目がよくないことによる心理面への影響)
⑥口呼吸がメインとなり、風邪やインフルエンザなど空気感染するウイルス性疾患に罹患しやすくなる
患者 初診時年齢23歳(ゼネコン勤務)
主訴 でこぼこ、出っ歯
〉 診断
叢生、上下顎前突
〉 治療計画
抜歯:14,24,34,44
装置:リンガルブラケット矯正装置(STb)歯科矯正用アンカースクリュー
〉 治療概要
叢生と上下顎前歯の突出、口唇閉鎖不全を認めたため抜歯を選択した。歯科矯正用アンカースクリューとMFTによりプロファイルを改善した。
治療期間:25ヶ月
治療費:130万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど(MFTの継続が特に重要です)。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時年齢14歳11カ月(中学生)
主訴 でこぼこ、出っ歯
〉 診断
叢生、上顎前突
〉 治療計画
抜歯:14,24
装置:リンガルブラケット矯正装置(STb)
〉 治療概要
叢生と上顎前歯の突出、口唇閉鎖不全を認めたため抜歯を選択した。
治療期間:24ヶ月
治療費:130万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど(MFTの継続が特に重要です)。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時年齢18歳(大学生)
主訴 でこぼこ、出っ歯
〉 診断
叢生、上顎前突
〉 治療計画
抜歯:14,24
装置:リンガルブラケット矯正装置(STb)歯科矯正用アンカースクリュー
〉 治療概要
叢生と上顎前歯の突出、口唇閉鎖不全を認めたため抜歯を選択した。歯科矯正用アンカースクリューとMFTによりプロファイルを改善した。慢性鼻炎・口呼吸に伴う歯肉炎は、口唇閉鎖しやすくなったことにより改善傾向にある。
治療期間:28ヶ月
治療費:130万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど(MFTの継続が特に重要です)。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
「出っ歯」に関する Q&A
Q 上の前歯が出ています。口が閉じにくく、閉じた時に下顎に梅干しのようなシワができるのがとても気になります。いつも不機嫌そうな顔に見られてしまいます。矯正治療でこのシワは治りますか?
上の歯が突出しているため。下唇に力を入れて引き延ばさないと閉じきれない状態です。上の前歯を適切な位置まで引っ込めることにより、無理なく閉じることができるようになり、下顎のシワも気にならなくなるでしょう。
Q 出っ歯で口元のラインが気になります。バランスの良い横顔の基準はありますか?
アメリカの矯正歯科医のリケッツ先生が発表したEライン(エステティックライン)が基準として用いられることが多いです。Eラインは横顔で鼻の先端とオトガイ(顎)の先端を結ぶラインで、日本人の成人ではこのラインに、上下の唇が接するくらいが理想的な口元のラインとされます。
1.歯科矯正とバランスの良い横顔
歯科矯正専門医が考える「美しい横顔・口元」の基準とは?
「横顔や口元のライン」の評価には人種差(骨格差)や個人の好みがあるため、完璧なゴールがあるわけではありません。
私たち歯科矯正専門医は「日本人の美しい横顔・口元」の評価として以下のような基準を持っています。
「Nasolabial angleが90.0°〜115.0°で上下口唇がイー・ラインに接する〜わずかに後方位。口唇閉鎖時にオトガイの緊張感がなく、メンタリースサルカスが形成されている状態。」
是非みなさんもスマートフォンで横顔を撮影して、ご自分のNasolabial angleとイー・ラインをチェックしてみてください。
icon-link 横顔のライン icon-arrow-right
icon-link イー・ライン(Eライン) icon-arrow-right
2.上顎前突(出っ歯)と咬むこと
上顎前突(出っ歯)の症状では「上下の前歯が水平的に離れて」います。
つまり、普通に咬んだ状態では上下の前歯が接していないことが多いのです。
歯科用語で前歯4本は「切歯」と呼びます。
文字通り「食べ物を切断する」機能があります。
上顎前突(出っ歯)の人は前歯で上手く「咬み切る」ことができないので、後ろの歯(小臼歯や大臼歯)で「咬みちぎる」様な食べ方をします。
前歯で切断できない分、食べたもの(食塊)が大きくなってしまい臼歯部で咬む負担が増えてしまします。
人によっては、十分に咬むことをせず、飲み込んでしまう場合もあります。
そのような不十分な咀嚼・嚥下が続くと消化器官に悪影響を及ぼしかねません。
当然全身の健康への影響も心配されます。
歯科矯正で上顎前突(出っ歯)を治療することは、見た目だけでなく全身の健康増進にも価値のあることなのです。