受け口(下顎前突 かがくぜんとつ)
下の前歯が上の前歯よりも前方に出ている状態で、反対咬合や下顎前突とも呼びます。
平成23年の厚生労働省の歯科疾患医療調査では12~20歳の2%が下顎前突と報告されています。
下顎前突には大きく4つのタイプがあります。
①下の前歯が前方に出ている(歯槽性)
②下顎が過度に前方に出ている(骨格性)
③上の前歯が内側に傾斜している(歯槽性)
④上顎が後方にある(骨格性)
原因
①遺伝
②舌の位置、大きさの異常
③口呼吸(口呼吸をすることで舌の位置が低位になり気道が狭くなる。そのため気道を確保しようと下顎を前方に突き出す癖がつき、それが習慣化することで受け口になりやすくなる。)
下顎前突のリスク
①ものが咬みにくい(胃腸障害や嚥下障害を起こしやすい)
②奥歯への負担が大きく、歯の寿命が短くなる可能性がある
③発音障害(サ行タ行などが発音しにくい)
④審美的障害(見た目がよくないことによる心理面への影響)
患者 初診時年齢36歳6カ月(看護師)
主訴 受け口。
〉 診断
反対咬合(下顎の機能的前方位を伴う)、叢生
〉 治療計画
抜歯:38
装置:リンガルブラケット矯正装置(STb)
〉 治療概要
3級ゴムとIPRを併用し被蓋と叢生の改善を行った。MFTは全期間を通じて行った
治療期間:17ヶ月
治療費:130万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど(MFTの継続が特に重要です)。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時年齢22歳4カ月(病院事務)
主訴 受け口、でこぼこ。
〉 診断
反対咬合(下顎の機能的前方位を伴う)、叢生
〉 治療計画
抜歯:38,48
装置:リンガルブラケット矯正装置(STb)、リンガルアーチ、スライディングプレート
〉 治療概要
前歯部被蓋の改善はリンガルアーチとスライディングプレートを用いた。その後3級ゴムとIPRを併用し、被蓋の維持と叢生の改善を行った。MFTは全期間を通じて行った。
治療期間:20ヶ月
治療費:125万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど(MFTの継続が特に重要です)。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時年齢16歳10カ月(高校生)
主訴 受け口、でこぼこ。
〉 診断
反対咬合(下顎の機能的前方位を伴う)、叢生
〉 治療計画
抜歯:38,48
装置:上顎・リンガルブラケット矯正装置(STb)下顎・ラビアルブラケット矯正装置(クリアブラケット)
〉 治療概要
3級ゴムとIPRを併用し被蓋と叢生の改善を行った。MFTは全期間を通じて行った。
治療期間:20ヶ月
治療費:102万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、舌癖による後戻りなど(MFTの継続が特に重要です)。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
「受け口」に関する Q&A
Q 受け口は早く治した方がよいのですか?
上下の前歯の咬み合わせを反対のままにしておくと、下顎の骨が過度に成長しやすくなります。場合によっては将来、手術によって下顎を引っ込める外科矯正に移行することもあります。受け口の状態でしたら、早い機会に矯正歯科専門医を受診してください。早ければ4、5歳から取り外し式装置で無理なく受け口を改善する治療方法もあります。
Q 反対咬合は遺伝しますか?
骨格性の反対咬合は遺伝する傾向があります。顎の成長を完全に矯正治療で抑えることはできませんが、できるだけ早期に歯並びを改善するとともに、受け口を増長する要因となる口呼吸や舌の位置をコントロールすることにより、リスクを最小限にすることができます。