部分矯正とは
歯並びで「特に気になる部分だけ」に限定して行う治療法です。
部分矯正という特殊な治療技術があるわけではなく、部分的な治療だけでも十分な結果が得られ、かつデメリットが少ない場合に「全体矯正の技術(装置)を部分的に応用する」治療法です。
M.T.M.(マイナー・トゥース・ムーブメント:Minor tooth movement)とも呼ばれます。
治療の目標について
1)矯正歯科治療の目標
矯正歯科治療で目指す歯並び・咬み合せは以下の要件を備えています。
1. 歯列にデコボコがなく整っている。
2. 前歯も奥歯もしっかり咬める。
3. 顎関節と調和した咀嚼運動ができる。
4. 歯や歯周組織の健全性が保たれる。
5. 口元のラインのバランスがとれている。
2)部分矯正の目標と限界
部分矯正では上記1「歯列にデコボコがなく整っている」ことの中でも更に部分的な「前歯がキレイに整っている」ことを目標にすることがほとんどです。
一方、部分矯正では前記2〜3の治療目標を達成することはできません。
そのため部分矯正では全体矯正に比べて「仕上がりの完成度は低く」なります。
部分矯正の適応について
部分矯正では「患者さんのニーズ」と「医療面での許容範囲」の擦り合わせが必要になります。
1)部分矯正の必要条件
部分矯正を行うための必要条件として下記の項目があります
1. 奥歯の咬み合わせなど、治したい部分以外に大きな問題がないこと。
2. 部分矯正を行うことで、それ以外の歯並び・咬み合わせにとってマイナスにならないこと。
3. 抜歯が必要な部分矯正では、治療後に隙間が残った場合の補綴処置(残った隙間をプラスチックやセラミックで閉じる方法)に同意していただけること。
4. 全体矯正より「仕上がりの完成度は低い」ことに同意していただけること。
2)部分矯正を行う具体的な症状
当院では以下のような症状の場合に部分矯正を行っています。
1. 軽度な前歯の歯列不正
(デコボコ、隙間、出っ歯、傾きetc)
2. 矯正治療のわずかな後戻り
3. 一般歯科治療の前処置
- 1 )ブリッジ作製のため歯の平行性の獲得
- 2 )インプラントを埋入するためのスペースやクリアランスの獲得
- 3 )傾斜した奥歯のアップライト(整直)
- 4 )歯周病などでフレアアウトした前歯を後退させる
部分矯正≠簡単な治療
当院では「安く早く楽にできる」という理由で部分矯正をお勧めすることはありません。
通常の精密検査・診断により適応を判断させていただきます。
患者 初診時 21歳 女性 (大学生)
主訴 上の前歯のでこぼこ。
〉 診断
歯と歯槽基底の大きさの不調和による叢生
〉 治療計画
抜歯:なし
装置:リンガルブラケット矯正装置(Clippy L)
〉 治療概要
患者希望により上顎前歯部MTMにて機能的咬合を確立した。
治療期間:8ヶ月
治療費:40万円+tax
〉 治療上のリスク等
リセッション、ブラックトライアングル、後戻りなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時 20歳 女性 (大学生)
主訴 下の前歯のでこぼこ。
〉 診断
歯と歯槽基底の大きさの不調和による叢生
〉 治療計画
抜歯:なし IPR:各コンタクト0.15mm
装置:リンガルブラケット矯正装置(Clippy L)
〉 治療概要
患者希望により下顎前歯部MTMにて機能的咬合を確立した。
治療期間:8ヶ月
治療費:40万円+tax
〉 治療上のリスク等
リセッション、ブラックトライアングル、後戻りなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
○(グリーン丸印) 歯茎の高さの段差が改善している
*1番目の歯と2番目の歯の歯茎の高さには1mm程度の差があるのが適正です。
患者 初診時 27歳 女性 (看護師)
主訴 上の前歯のねじれ。
〉 診断
歯と歯槽基底の大きさの不調和による叢生
〉 治療計画
抜歯:なし IPR:各コンタクト0.15mm
装置:リンガルブラケット矯正装置(Clippy L)
〉 治療概要
患者希望により上顎前歯部MTMにて機能的咬合を確立した
治療期間:10ヶ月
治療費:50万円+tax
〉 治療上のリスク等
リセッション、ブラックトライアングル、後戻りなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。