「できるだけ歯を抜かずに、子供の歯並びを整えてあげたい!」
親から子へ。生涯にわたる最高の贈りもの。
国際社会で活躍する子供達にとって「整った歯並び・健康な咬み合わせ」は自己管理・自己表現の一つとして評価される傾向にあります。
*当院でも子供の歯並びに関する御相談は、年々増加しています。
知っているようで知らない。
「子供の矯正治療」に関するよくあるご質問にお答えします。
なぜ矯正治療が必要なの?
「歯列不正」は子供の成長発育や健康に悪影響を及ぼします!
「歯列不正」は歯並びだけの問題ではありません。子供の成長発育、健康、時には人格形成にまで影響を及ぼします。
日本矯正歯科学会では「歯列不正が及ぼす悪影響」について、以下のような項目を挙げています。(大人にも子供にも当てはまります)
1 食べ物がよく咬めない
2 言葉が明瞭でなくなる
3 むし歯になりやすい
4 歯槽膿漏になりやすい
5 口臭の原因になる
6 顎の関節に負担をかける
7 歯を折ったり、ケガをしたりしやすい
「矯正治療」では見た目が整っているだけでなく、上記のようなリスクを軽減し、本来の口腔機能を行えるような、歯並び・咬み合わせを目指します。
いつから始めたらいいの?
開始時期は症状により異なります。早めに現状を把握することから始めましょう!
最適な開始時期を逃さないためにも歯列矯正専門クリニックでのカウンセリングをお勧めします。
矯正治療は2つの段階に分かれます。歯並び・咬み合わせの状態により最適な開始時期が異なります。
1期治療
「子供の矯正」や「準備矯正」とも呼びます。
乳歯列期から混合歯列期にかけての治療で、顎骨の成長発育が残っている時期です。
*混合歯列期とは乳歯と永久歯が混在している時期のことです。
2期治療
「大人の矯正」や「本格矯正」とも呼びます。
全ての永久歯が生え揃い、顎骨の成長が落ち着いてからの治療です。
矯正治療の段階について
表は目安であり精密検査により各自の治療計画を立てる必要があります。
治療段階 | 早期治療 |
歯列の状態 | 乳歯列期(全てが乳歯) |
顎の成長 | 緩やかに成長 |
治療目標 | 悪習癖を改善し永久歯萌出に備える |
適応年齢 | 3歳〜7歳 |
治療段階 | 1期治療(子供の矯正、準備矯正) |
歯列の状態 | 混合歯列期(乳歯と永久歯が混在) |
顎の成長 | 旺盛な成長(変化)がある =上下の顎の位置関係が変化する |
治療目標 | 1.永久歯の萌出スペースの確保 2.顎の骨の成長のコントロール 3.前歯を並べて見た目を改善する 4.歯列に影響する悪習癖の改善 |
適応年齢 | 8歳〜13歳 |
治療段階 | 2期治療(大人の矯正、本格矯正) |
歯列の状態 | 永久歯列期(全てが永久歯) |
顎の成長 | 成長(変化)が収束 =上下の顎の位置関係が安定している |
治療目標 | 1.機能的咬合の確立(顎関節に負担がかからずしっかり咬めること)) 2.理想的な歯列形態(整ったアーチに並べること) 3.調和のとれた口元のラインの達成 |
適応年齢 | 13歳以降 |
icon-exclamation-circle 「子供の時に治療したのに、大人になってからやり直した。」
初診カウンセリングでよく聞く声です。
準備矯正はその名の通り、本格矯正のための土台作りです。この時期に全ての矯正治療が終了するわけではありません。
顎の成長発育にアプローチすることは子供の時期にしかできません。また歯列不正を増悪する要因は早期に取り除く必要があります。
一方、全ての永久歯が生え揃っておらず、顎骨が成長途中の状況では仕上げの治療はできないのです。
このように歯列矯正では適切な時期に適切な治療を段階的に行っていく必要があるのです。
子供の矯正では何をするの?
永久歯が生える環境を整えること。そして顎骨のバランスを整えることを目指します。
永久歯の萌出スペース(歯が生えてくる隙間)の確保
顎の骨や歯列を広げることで、永久歯が正しく生えてくるための隙間を作ります。
特に学童期は成長発育を利用し「顎の骨自体」を大きくする事が可能です。
これは成人矯正にはないメリットで、将来本格矯正(大人の矯正)が必要になった場合でも抜歯の可能性を低くすることが出来ます。
顎の骨の成長のコントロール
不正咬合には「歯並び」によるものの他に、上・下顎骨(上の歯、下の歯が生えている土台の骨)の位置のずれによるもの(骨格性の上顎前突(=出っ歯)、骨格性の下顎前突(=受け口)など)があります。
顎の成長バランスをコントロールすることで、正しい骨格形成を行えるのは成長期の治療の最大の特徴であり、将来的に顎変形に対する手術の可能性を減らすことができます。
見た目の改善
感受性豊かな学童期に、一番目立つ前歯を整えることはコンプレックスをなくし、明るく積極的な人格形成の一助になります。
また、でこぼこを改善することで、歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯肉炎のリスクを大幅に軽減できます。
どのような装置を使うの?
取り外し可能な装置からスタートします。
1. 可撤式プレート装置
歯列を広げて生え替わりの隙間を作る装置です。骨格自体を大きくするものではなく、凸凹が大きすぎる場合には適応になりません。
取り外し可能なので、お口の中を清潔に保てます。
患者 初診時年齢7歳9ヶ月 女児
主訴 生え変わりの隙間が足りない。
〉 診断
歯と歯槽基底の大きさの不調和による叢生
〉 治療計画
装置:可撤式プレート装置、マルチブラケット矯正装置
〉 治療概要
上下顎前歯の萌出スペース不足を認めたため、可撤式プレート装置にて歯列の側方拡大を行った(上顎6ヶ月、下顎7ヶ月)。歯列拡大後、上下顎前歯部の歯根完成を待ち、叢生改善のためマルチブラケット矯正装置を部分的に装着した。骨格的に大きな問題はないが、第2大臼歯の萌出と親知らずの状況を経過観察する必要がある。2期治療は必要ないと考えられる。
治療期間:27ヶ月(経過観察中)
治療費:44万円+tax
〉 治療上のリスク等
親知らずによる第2大臼歯の萌出障害、後戻りなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
2. 歯列矯正用咬合誘導装置(プレオルソ)
柔らかいマウスピース型の装置です。
「舌・口唇・頬」の筋肉が歯列に加える圧力バランスを適正にすることで、歯並びと顎の成長発育を整える装置です(機能的矯正装置)。同時に口呼吸から理想的な鼻呼吸へ誘導します。取り外し可能なので、お口の中を清潔に保てます。
患者 初診時年齢8歳2ヶ月 女児
主訴 上の前歯の隙間、下の前歯のでこぼこ。
〉 診断
歯と歯槽基底の大きさの不調和による叢生、過蓋咬合
〉 治療計画
装置:歯列矯正用咬合誘導装置(プレオルソ)、可撤式プレート装置
〉 治療概要
過蓋咬合改善のため、MFT及び歯列矯正用咬合誘導装置(プレオルソ)を12ヶ月使用。上顎スペースは側切歯萌出に伴い閉鎖した。その後上顎に可撤式プレート装置を8ヶ月使用し側方歯の萌出スペースを確保した。下顎前歯部の叢生は自然に排列を認めたため経過観察とした。骨格的に大きな問題はないが、第2大臼歯萌出、親知らずの状況を経過観察する必要がある。2期治療は必要ないと考えられる。
治療期間:20ヶ月(経過観察中)
治療費:45万円+tax
〉 治療上のリスク等
親知らずによる第二大臼歯の萌出障害、後戻りなど。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
過蓋咬合の治療
口腔周囲筋のバランスを整えることにより、過蓋咬合(前歯の重なりが深い咬み合わせ)が改善されました。固定式ワイヤーは使用していません。
受け口の治療
口腔内で舌をしっかり挙上し、正しく鼻呼吸ができるようにトレーニングすることで大人の前歯が適切な位置に萌出し受け口が改善しました。
「MFT 口腔筋機能療法」とは?
歯並びに影響をあたえる口腔顔面筋のバランスを整える方法です。
歯並び・咬み合わせは、遺伝要因のほか幼少期の生活習慣や癖などにも影響を受けます。嚥下時の舌突出や指しゃぶりなどの悪習癖は、開咬や上顎前突のリスクを高めます。また鼻呼吸が困難な状況(アレルギー性鼻炎など)では口呼吸が習慣的になり、口腔周囲筋の弛緩につながります。口腔筋機能療法(MFT)では、このような後天的な口腔顔面筋(舌・口唇・頬など)の不調和を整えることで、歯並び・咬み合わせの安定を目指します。