ハイブリッドでの治療とは
「歯の裏側(舌側)からの矯正」と「マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置」それぞれの〝臨床上の強みを組み合わせた(ハイブリッド)治療法”です。
矯正装置にはそれぞれ〝得意な歯の動かし方”があります。それぞれの装置の〝得意な動かし方”を組 み合わせて「目立たず+効率よく」治療を行うことができます。
ワイヤーが得意な動かし方
❶ 歯列全体のデコボコを一気に並べる
〝柔らかい形状記憶ワイヤー”を治療初期に使うことで、歯列の3次元的な並び*を一気に整える (Leveling)ことができます。
(図1)形状記憶ワイヤーによるLeveling
*水平的なデコボコ、垂直的なズレ(高さのズレ)、傾き、捻転(捻れ)(図2)ワイヤーとパ ワーチェーンによる捻転改善 etc.
(図1) 形状記憶ワイヤーによるLeveling
(図2)ワイヤーとパ ワーチェーンによる捻転改善
❷ トルクのコントロール
歯冠部を回転中心として、骨内にある歯根の傾きを変えることを「トルク・コントロール」と呼びます。
ワイヤー矯正では〝歯面に接着したブラケットに太いワイヤーで矯正力を加える”ことで確 実にトルク・コントロールができます。
*アライナー矯正はトルク・コントロールが苦手で、歯根を回転中心とした〝傾斜移動”に適しています。
前歯6本をまとめて後方移動するステップでは〝トルク・コントロールを確実にし、歯体移動”させることが求められます。
(図3) トルク・コントロールによる歯体移動
さらに歯科矯正用アンカースクリューを併用することで、確実に前歯を後方移動できることがワイヤー矯正の強みです。
(図3) トルク・コントロールによる歯体移動
マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置*が得意な動かし方
*当院では「インビザライン」と「ASOアライナー」を使用しています。ここではアライナーと表記します。
❶ 歯列の側方拡大
アライナーは歯列全体を面で押し広げることができ、力のロスがなく確実に側方拡大することが できます。
(図4)アライナーによる側方拡大
また、側方拡大時に反作用を受ける前歯の位置のコントロールも精密に行うことができます。
(図4)アライナーによる側方拡大
❷ 臼歯の遠心移動
遠心移動したい歯以外はアライナーでずれることなく覆われており(固定源となる)、更にアライナーに加わる咬合力が浮きを防ぐため、ロスなく矯正力を加えることができます。
(図5) アライナーによる遠心移動
❸ 臼歯の圧下
治療中は〝厚さ0.5mm(上下で1.0mm)”のアライナーが歯列を覆っています。
そのため臼歯部には通常より強い咬合力が加わり、臼歯部を沈み込ませる力(圧下力)*として作用します。
*その結果生じる〝臼歯部オープンバイト(奥歯が浮いて咬みにくい状態)”はアライナー治療の課題の一つ ですが、奥歯が咬めない分、前歯が咬み込みやすくなるため〝前歯部オープンバイト(前歯が咬めない)”の治療には効果的です。(図6)
❹ 咬合干渉の除去
臼歯の位置の〝僅かなズレ”は歯列全体の咬みにくさに〝大きく影響”します。
アライナーでは個々の歯の位置のズレを〝0.25mm単位で修正”することが可能です。
(図5)アライナーによる遠心移動
(図6)