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SYNC横浜元町矯正歯科

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矯正治療に伴う歯根吸収のメカニズム

2026年2月3日 by admin

2026年02月03日 編集
文・監修/医療法人社団Synchronize理事長
公益社団法人日本矯正歯科学会認定医 小玉晃平

― なぜ起こるのか、どこまで予測できるのか ―

矯正治療を行う上で、「歯根吸収」は避けて通れないテーマの一つです。
歯根吸収とは、歯の根の一部が吸収され、結果として歯根が短くなる現象を指します。
特に矯正治療中に認められる歯根吸収は、矯正力によって誘発される生体反応として、数多くの研究で報告されています。
重要なのは、歯根吸収が「治療の失敗」や「誤った処置」によってのみ生じるものではない、という点です。
矯正治療は、生体の反応を利用して歯を動かす医療である以上、一定の確率で歯根吸収が生じ得ることが、学術的にも広く認識されています。
このような矯正治療に伴う歯根吸収は、**炎症反応を介して生じる外部性歯根吸収(Orthodontically Induced Inflammatory Root Resorption:OIIRR)**として整理されています〔1〕

本項では、矯正治療に伴う歯根吸収がどのようなメカニズムで起こるのかを、できるだけ整理し、過度に専門用語に偏らない形で解説します。

歯はどのように動いているのか

矯正治療では、歯に持続的な力を加えることで歯を移動させます。
このとき、歯そのものが骨の中を「押し進む」わけではありません。

歯の周囲には歯根膜と呼ばれるクッションのような組織が存在し、
この歯根膜を介して、歯と歯槽骨はつながっています。

矯正力が加わると、

 • 歯が押される側の歯根膜は圧迫される
 • 引っ張られる側の歯根膜は伸展される

という状態が生じます。

圧迫された歯根膜では一時的に血流が低下し、
その結果として軽度の炎症反応が起こります。
この炎症反応をきっかけに、圧迫側の歯槽骨は吸収され、
一方で引っ張られる側では新しい骨が形成されます。

この「骨の吸収と再生」のバランスによって、歯は少しずつ移動していきます。
これは矯正治療における正常な生体反応です。

歯根吸収はなぜ起こるのか

歯根吸収は、この正常な歯の移動過程の中で、
歯根表面にまで炎症反応が及んだ場合に生じると考えられています。
通常、歯根の表面は「セメント質」という組織に覆われており、
このセメント質は歯根を吸収から守る役割を果たしています。
そのため、一時的な刺激や弱い力では、歯根が吸収されることはありません。

しかし、

 • 歯根膜の圧迫が強い
 • 圧迫が長期間持続する
 • 同じ方向への移動が続く

といった条件が重なると、
歯根膜周囲の炎症状態が長引き、
歯根表面の防御機構が一時的に弱くなることがあります。

この状態になると、歯根の一部が骨と同じように認識され、
吸収反応が起こることがあります。
これが、矯正治療に伴う歯根吸収です。

歯根吸収のメカニズムを整理すると

矯正治療に伴う歯根吸収は、以下の一連の流れとして理解できます。

1. 矯正力によって歯根膜が圧迫される
2. 圧迫部位で血流障害が生じ、炎症反応が起こる
3. 炎症に関与する物質(サイトカインなど)が局所で放出される
4. 歯根表面のセメント質の防御機構が一時的に低下する
5. 破歯細胞(破骨細胞に類似した細胞)が活性化する
6. 歯根表面に吸収が生じる

この過程には、RANKL/OPG 系を介した破骨細胞様細胞の分化・活性化が関与していることが、基礎研究および実験的研究から示されています〔2〕。

このように、歯根吸収は
「力 → 炎症 → 生体反応」
という流れの中で起こる現象であり、
矯正力が直接歯根を破壊しているわけではありません。

なぜ歯根吸収には個人差があるのか

歯根吸収の起こりやすさには、明らかな個人差があることが知られています。
同じような治療計画、同じような装置を用いても、

• 歯根吸収がほとんど起こらない方
• 軽度の吸収が認められる方
• 比較的早期に吸収が確認される方

が存在します。

これは、歯根吸収が単一の原因で起こるものではなく、
複数の因子が重なって生じる多因子性の現象であるためです。

たとえば、

• 歯根の形(細長い歯根、先端が尖った歯根)
• 骨の厚みや歯根の位置
• 炎症反応の起こりやすさ
• 過去の外傷歴や矯正治療歴

などは、治療前から個人ごとに異なります。

これらの要素は、歯科医師が完全にコントロールできるものではありません。
そのため、正しく計画された治療であっても、
歯根吸収が起こる可能性はゼロにはならないと考えられています。
このような個人差や治療因子の影響は、臨床研究においても報告されています〔3〕。

解剖学的条件と歯根吸収リスク

近年では、CT(CBCT)を用いた三次元的な診断により、
歯根と周囲構造の位置関係を詳細に把握できるようになっています。

CT検査によって、

• 歯根と切歯管が近接している
• 歯槽骨がもともと薄い
• 歯根の外側に十分な骨量がない

といった解剖学的条件が確認されることがあります。

このような場合、歯を動かせる範囲には明確な限界があり、
無理に移動させると歯根膜の圧迫が強くなり、
歯根吸収のリスクが高まります。

そのため治療計画では、
理想的な歯並びのイメージだけでなく、安全に動かせる範囲を優先する判断が重要になります。

歯根吸収の臨床的特徴

矯正治療中に認められる歯根吸収には、いくつかの特徴があります。

• 多くは軽度から中等度である
• 自覚症状はほとんどない
• 力を調整・中止することで進行が止まることが多い
• 経過観察によりコントロール可能なケースが大半である

歯根吸収は、進行性の疾患というよりも、
治療経過の中で注意深く管理していく必要がある反応と捉えるのが適切です。

歯根吸収と向き合うために

矯正治療において最も重要なのは、
歯根吸収のリスクを正しく理解した上で治療を進めることです。

• 治療前にCTやレントゲンで状態を把握する
• 無理のない力で歯を動かす
• 定期的に歯根の状態を確認する

これらを積み重ねることで、
歯根吸収のリスクを最小限に抑えることが可能になります。

まとめ

矯正治療に伴う歯根吸収は、

 • 矯正力による歯根膜の炎症
 • 歯根表面の防御機構の一時的な低下
 • 生体反応としての吸収反応

が重なって生じる現象です。

正しい治療を行っていても、個人差や解剖学的条件により、
一定の確率で起こり得ることが学術的にも示されています。

歯根吸収を正しく理解し、
安全性を重視した治療計画と経過管理を行うことが、
矯正治療を長期的に成功させるために重要です。

 

参考文献(和文)

〔1〕Brezniak N,Wasserstein A.
矯正治療に伴う炎症性歯根吸収(Orthodontically Induced Inflammatory Root Resorption).
日本矯正歯科学会雑誌.

〔2〕吉野智一.
矯正力による歯根吸収における炎症性サイトカインと破骨細胞分化機構.
日本大学大学院歯学研究科 学位論文.

〔3〕藤田幸弘 ほか.
矯正治療に伴う外部性歯根吸収の発現因子に関する臨床的検討.
日本矯正歯科学会雑誌.

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