咬み合わせが深い(過蓋咬合 かがいこうごう)
上下の前歯の重なりが過度に大きい状態。程度の強いものでは下の歯が見えない場合もあります(前歯の重なりは2〜3mmが標準です)。
平成23年の厚生労働省の歯科疾患医療調査では12~20歳の8%が過蓋咬合と報告されています。
原因
①骨格性のもの
②歯の過萌出によるもの
③奥歯の高さの減少(咬耗や虫歯による)
過蓋咬合のリスク
①顎関節への負担が大きい(顎関節症の原因となりうる)
②ものが咬みにくい(胃腸障害や嚥下障害を起こしやすい)
③審美的障害(見た目がよくないことによる心理面への影響)
患者 初診時年齢21歳5カ月(大学生)
主訴 歯列の隙間。咬み合わせの左右差を感じる。
〉 診断
過蓋咬合 空隙歯列 14,44部scissors bite
*下の前歯が上顎の歯茎に当たるくらい深く咬み込んでいる。
〉 治療計画
抜歯:14,24
装置:リンガルブラケット矯正装置(上顎:Kurz7th、下顎:STb)
〉 治療概要
上顎には咬合挙上に有効なKurz7thブラケットを使用し、Over bite、Over jetともに適正になった。上下正中線も一致し、咬合の左右差も改善された。
治療期間:28ヶ月
治療費:130万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングルなど。鼻炎の改善と口唇閉鎖力の維持が特に重要です。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時年齢19歳8カ月(フリーター)
主訴 出っ歯、でこぼこ。
〉 診断
上顎前突、過蓋咬合、叢生
〉 治療計画
抜歯:14,24
装置:リンガルブラケット矯正装置(上顎:Kurz7th、下顎:STb)
〉 治療概要
初診時より大臼歯咬合面の咬耗が強かったため、矯正治療終了後CRによる形態修正を行った。
治療期間:24ヶ月
治療費:132万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、ブラックトライアングル、大臼歯部の咬耗による咬合高径の減少には注意が必要である。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
患者 初診時年齢19歳8カ月(フリーター)
主訴 でこぼこ、出っ歯。
〉 診断
過蓋咬合、叢生
〉 治療計画
抜歯:非抜歯
装置:ラビアルブラケット矯正装置(上顎:デーモンブラケット、下顎:T21ブラケット)
〉 治療概要
22,33に早期接触を認めたため、早期にマルチブラケット矯正装置による機能的咬合の確立を目指した。
治療期間:36ヶ月
治療費:80万円+tax
〉 治療上のリスク等
歯根吸収、リセッション、親知らずによる上顎:Kurz7th、下顎:STb後戻り。
*矯正治療では上記以外にもリスクや副作用が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
「咬み合わせが深い」に関する Q&A
Q 歯科検診で8歳の子供が過蓋咬合と言われました。今のうちから何か治療するべきでしょうか?
乳歯顎の正しい成長発育のためにも、矯正治療を開始するのが良いと考えます。この時期には取り外し式の装置を使うことが多く、お子様の負担も比較的少ないと思います。代表的なものにバイトプレート(咬合挙上板)、FKO(機能的矯正装置)などがあり、前歯の高さを低く抑えながら、奥歯が適切な高さまで萌出することで、咬み合わせの深さを調節します。
Q 前歯がどの程度重なっていると過蓋咬合と診断されるのですか?
過蓋咬合の定義には色々な表現が使われます。一般的には「上の前歯が下の前歯の歯冠長の2/3以上被蓋しているもの」「上下の前歯の重なりが5〜6mm以上のもの」「被蓋が非常に深く下の前歯のほとんどを被っているもの」などの症状を言います。