発音・滑舌(3)

発音・滑舌(3)

日本語の調音の実際

裏側矯正と発音・滑舌について考えるシリーズの第3回目です。
今まで「調音と調音器官」「子音の分類」について見てきました。
今回は、日本語の各子音がどのように調音されるのか。「裏側矯正で影響が出そうな子音」はどれかを探っていきましょう。

1 ちょっと復習。

裏側矯正では矯正装置(ブラケットとワイヤー)を歯の裏側に装着します。
その最大のメッリットは「装置が見えずに、キレイな歯並び・健康な咬み合わせ」を実現できることです。
一方、裏側矯正のデメリットとして、カウンセリングにいらっしゃる多くの方が心配しているのが「発音・滑舌」の問題です。
確かに、装置の位置を考えると調音器官である「舌」への影響が考えられそうですね。また広義に考えると唇や下顎への影響もゼロではないかもしれません。
ここで少し復習しましょう。
日本語の(英語も同様です)音を分解していくと、最終的には「母音」と「子音」という音の最小単位にたどりつきます。物質を細かく分解していくと「原子」にたどり着くようなものですね。

1-1 母音

舌、唇、喉などを閉じたり狭めたりせずにストレートに出す音です。そして母音は全て、声帯を振動させて出す「有声音」です。

1-2 子音

舌、唇、喉などで邪魔しながら出す音です。子音には、有声音だけでなく、声帯を振動させない無声音もあります。

1-3 母音と子音の数

日本語の音の数を考えてみましょう。
母音の数は5個。子音の数は16個(研究者によって若干数が違うようです)。合計21個です。
ちなみに英語では、母音が16個。子音が25個。合計41個です。
ずいぶん違うものですね!
母音の調音はその音の出し方から、裏側矯正の影響は受けません。
では、日本語の各子音がどのように調音されるのか。「裏側矯正で影響が出そうな子音」はどれかを探っていきましょう。

2 日本語の調音の実際

2-1 カ行について

カ行の子音は「カクケコ」では軟口蓋破裂音の無声子音[k] 「キ」では口蓋化して[kʲ] *口蓋化:子音が調音点で調音されると同時に、前舌面が硬口蓋に向い盛り上がり近づく現象のこと。

2-2 ガ行について

ガ行の子音は軟口蓋破裂音の有声子音[g]

2-3 サ行について

サ行の子音は「サスセソ」では歯茎摩擦音の無声子音[s] *歯茎摩擦音:舌先と上の歯・歯茎の間に狭めをつくり空気を擦りだす音。
「シ」では後部歯茎摩擦音の無声子音[ʃ] *後部歯茎摩擦音「サスセソ」に比べて調音点がやや後方に移行した歯茎硬口蓋と前舌を調音点とする摩擦音。より広い範囲(歯茎から硬口蓋に至る)で摩擦が起きる。硬口蓋歯茎摩擦音ともいう。

2-4 ザ行について

ザ行の子音は「ザズゼゾ」では歯茎破擦音の有声子音[dz] 「ジ」では後部歯茎破擦音の有声子音[ʤ]

2-5 タ行について

タ行の子音は「タテト」では歯茎破裂音の無声子音[t] *歯茎破裂音:歯茎部に舌先を一度ぴったりと押し当てて閉鎖した状態か
らそこを一気に完全に開いて空気を放出させる音
「チ」では硬口蓋歯茎破擦音の無声子音[tʃ] 「ツ」では歯茎破擦音の無声子音[ts]

2-6 ダ行について

ダ行の子音は「ダデド」では歯茎破裂音の有声子音[d] 「ヂ」はジに同じ後部歯茎破擦音の有声子音[ʤ]

2-7 ナ行について

ナ行の子音は「ナヌネノ」では歯茎鼻音[n] 「ニ」では硬口蓋鼻音[ɲ]

2-8 ハ行について

ハ行の子音は「ハヘホ」では声門摩擦音の無声子音[h] 「ヒ」では硬口蓋摩擦音の無声子音[ç] 「フ」では両唇摩擦音の無声子音[Φ]

2-9 バ行について

バ行の子音は両唇破裂音の有声子音[b]

2-10 マ行について

マ行の子音は両唇鼻音[m]

2-11 ヤ行について

ヤ行の子音は半母音で、硬口蓋接近音の有声音[j]であるが、摩擦性に乏し
い。

2-12 ラ行について

ラ行の子音は「ラルレロ」では歯茎弾き音[ɾ]で歯茎・舌先を調音点とする
弾音。
「リ」では口蓋化して[ɾʲ]となる

2-13 ワ行について

ワ行の子音は半母音で、非円唇性の有声唇軟口蓋接近音[ɰ]

以上が日本語の調音の実際です。
では「裏側矯正で影響が出そうな子音」はどれでしょうか?
次回、じっくり考えましょう。

裏側矯正と発音・滑舌の第3回目「日本語の調音の実際」
調音についてさらに見えてきましたか?

(文・監修/医療法人社団Synchronize SYNC横浜元町矯正歯科 小玉晃平 KOHEI KODAMA,D.D.S.)

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