30代・40代からの裏側矯正-1

30代・40代からの裏側矯正-1

1. 30代・40代のライフスタイル

ずっと歯並びが気になっていてコンプレックスだった。」
「子育てが一段落して、お金にも少し余裕ができて自分の時間も持てるようになった。」
「仕事でのキャリア・アップを目指したい。自分自身の魅力を高めるために歯並びをキレイにしたい。」
「歯周病など歯や歯茎の健康面が心配。歯並びを整えて、ずっと自分の歯で食事できるように管理していきたい」

歯並び咬み合わせの重要性が社会的に周知されるようになり、30代・40代以降で矯正治療を始められる方が非常に増えています。
中には親子で同時に矯正治療をスタートされる方もいます。

2. 30代・40代からの裏側矯正の意味

2-1 加齢変化にどう向き合うか

口腔内の環境は年齢とともに少しずつ変化していきます。
「正しい歯並び・咬み合わせ」はこの加齢変化への対抗手段の1つになります。
30代・40代からの裏側矯正は、単に審美面の改善だけでなく「全身の健康増進に寄与する」という意味合いが強くなります。

すなわち、30代・40代からの裏側矯正では以下のような「プラスの流れ」を目指します。
「正しい歯並び・咬み合わせを作る→歯や歯茎を健全に保つ→自分の歯でしっかり咬める→全身の健康増進につながる」

2-2 歯並びが悪いことで生じる問題

2-2-1 虫歯や歯周病のリスクが高くなる

歯並びが悪いと、虫歯や歯周病に罹患するリスクが高くなります。
歯磨きがしにくく、プラークが溜まることで虫歯菌や歯周病菌の繁殖を許してしまうからです。

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2-2-2 全身的問題

歯列不正があると、食べ物をしっかり咬めないこと(咀嚼障害)で胃腸などの消化器官への悪影響が懸念されます。
また、姿勢の悪化や肩こり、頭痛など全身の健康状態への影響を生じる場合があります。

3. そもそも30代・40代からでも裏側矯正はできるの?

矯正装置・材料の改良や治療技術の進歩により、30代・40代以降の方でも問題なく裏側矯正をお受けいただけるようになりました。
基本的には「歯と歯周組織が健康であれば、年齢に関係なく矯正治療はできる」のです。

4. 30代・40代からの裏側矯正でリスクとなること

加齢に伴う歯や歯周組織の変化に留意する必要があります。

4-1 歯の変化

4-1-1 虫歯などによる修復物の増加

虫歯ができてしまった場合には、その部分を削ることになります。
削ったあとは様々な歯科材料によって修復します。

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4-1-1-1 削除量が少ない場合

プラスチック(レジン)を詰める。

4-1-1-2 削除量がやや多い場合

金属やセラミックの詰め物(インレー)を接着する。

4-1-1-3 削除量が非常に多い場合

歯の神経処置を行った上で金属やセラミックの被せ(クラウン)を入れる。
*専門的にはこれらの修復物を補綴物、修復のための処置を補綴処置と呼びます。以下この用語を用います。

歯は一度削ると元の天然の状態には戻せません。不可逆的な治療です。そのため年齢とともに、口腔内の補綴物は多くなります(減っていくということはありません)。

お口の中の衛生管理をしっかり行うことで、虫歯を作らないようにしましょう。

4-1-2 補綴物はなぜ矯正治療を難しくするのか?

まず、安心していただきたいのですが「30代・40代以上で補綴物が多くても裏側矯正は可能」です。
正しく治療された歯であれば、天然歯と同様に動かすことができます。
しかし、以下のような問題があるため注意が必要になります。

4-1-2-1 接着の問題

プラスチック、金属、セラミック。これら補綴物は天然歯に比べて矯正装置が接着しにくいというリスクがあります。
金属やセラミック用の接着剤もありますが、やはり天然歯よりは装置の脱落のリスクが高くなります。
この場合、補綴歯の表面をヤスリでザラザラにして接着しやすくすることがあります。ザラザラにした面は矯正治療終了後に研磨します。
裏側矯正では「装置を歯の裏側に接着する」ので、ザラザラにするのも補綴歯の裏面です。見た目に影響する表側のキレイな面はそのまま保存できることも裏側矯正のメリットの一つです。

4-1-2-2 マージンラインの問題

 

矯正治療後に合わなくなったマージンライン
矯正治療後に合わなくなったマージンライン
再補綴による審美性の回復
再補綴による審美性の回復

矯正治療で補綴歯を動かすと、補綴物と歯茎のラインが合わなくなる(隙間ができる)ことがあります。
この場合、審美面や清掃性を考え矯正治療後に再補綴(被せを新しく作ること)が必要になることがあります。
もし「矯正治療をしたい」+「自費診療でセラミックなどのキレイな歯を入れたい」とお考えの場合は、矯正治療で歯並びを正しく整えたあとで、セラミックなどの歯をキレイに入れてもらうのがよいでしょう。
ただし、現在の差し歯や被せが明らかに不適合で、審美的にも歯の健康上も急いで治したほうが良い場合には、プラスチックの仮歯(テック)に置き換えてもらい、矯正治療終了後に最終的な補綴物を入れてもらいましょう。

4-1-2-3 サイズの問題 

 
時々、本来の大きさより極端に小さな補綴物を見かけます。
歯列不正を残したまま補綴処置を行う場合、このようなことが生じます。
本来のサイズや形態と極端に異なる補綴歯は、矯正治療前に仮歯(テック)におきかえ、治療終了後に最終補綴を行います。

4-1-3 歯の欠損

虫歯や歯周病、外傷などにより歯を失ってしまうことがあります。
歯が欠損してしまった場合は、インプラント、ブリッジなどの外科・補綴処置により失った歯の機能を補うことになります。
これらの処置は機能回復の上では有効なものですが、矯正治療を難しくする場合もあります。

4-1-3-1 インプラントと矯正治療

歯が欠損した場合、インプラントはメリットの多い治療法です。
歯が欠損した状態で長期間放置しておくと隣の歯が倒れてきて咬み合わせのバランスを崩してしまいます。

歯の欠損は歯列全体に影響する
歯の欠損は歯列全体に影響する


インプラントは歯槽骨に土台となるチタン製のネジを植立し、その上に人口歯を被せる治療方法です。
裏側矯正による治療とインプラント植立
裏側矯正による治療とインプラント植立
インプラントにセラミッククラウンを装着
インプラントにセラミッククラウンを装着

土台となるインプラント本体は歯槽骨としっかりくっつくことが必要になります。天然歯のような動揺があってはいけません。
すなわち、インプラントで作った歯は矯正治療で動かすことはできません。
歯が欠損した場合、その隙間を矯正治療でバランスよく閉じることができるかもしれません。
また、インプラントが必要になる場合でも、他の歯の位置が矯正治療によって整ってからインプラントをすべきでしょう。
*場合によっては奥歯のインプラントを先に行い、それを用いて矯正治療を行うこともあります。

4-1-3-2 ブリッジと矯正治療

またブリッジの場合も同様で、矯正治療で正しく動かすことは困難です。
実際には、ブリッジは動かさないように治療を進めることが多いのですが、ダミー部(ブリッジで補っている本来欠損している部分)のスペースを矯正治療の歯の移動で使う場合には、ブリッジを切断する場合もあります。

4-1-3-3 総合的に治療計画を考える

矯正治療は歯科医療の一分野です。
口腔内の状況によっては、矯正治療だけでは理想的な咬み合わせを達成できない場合もあります。
そのような場合には、インプラント、ブリッジ、その他の補綴処置、歯周疾患に対する治療などを総合的に考えた治療計画を立てる必要があります。
歯列矯正をお考えの場合は、まずは矯正歯科専門医の受診をお勧めします。

4-1-4咬耗や破折

前歯の咬耗が見られる
前歯の咬耗が見られる
咬み合わせが深い(過蓋咬合)
咬み合わせが深い(過蓋咬合)


エナメルクラック
エナメルクラック

 
歯列不正を長年放置すると、部分的に歯が強く当たることで咬耗したり、ヒビ(クラック)が入ったり、破折することがあります。
また、強すぎる歯ブラシ圧や歯磨きの研磨剤の影響で、歯と歯茎の境目が削れてしまうことがあります。

5. まとめ

30代・40代からでも裏側矯正をスタートすることは可能です。
ただし「加齢に伴う歯や歯周組織の変化」に注意した治療計画を考える必要があります。

「30代・40代からの裏側矯正」について見えてきましたか?

(文・監修/医療法人社団Synchronize SYNC横浜元町矯正歯科 小玉晃平 KOHEI KODAMA,D.D.S.)

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